マーケティング近視眼

「マーケティング近視眼」という言葉があります。
セオドア・レビット氏が同名のタイトルの論文で提唱した概念で、自らの事業を生産者指向で狭く定義してしまうことで、代替品の出現によって衰退に追い込まれる失敗のことを意味します。

氏は、輸送事業ではなく鉄道事業と定義した鉄道会社、エンターテイメント事業ではなく映画事業と定義した映画会社などたくさんの例を挙げておられます。

氏は言います、「代替品の現れない製品はない」と。

少し考えても、
レコード→CD→MD→インターネットダウンロード
フィルム撮影→デジタル撮影
銀塩カメラ→デジタルカメラ→スマートフォン
白熱球→蛍光灯→LED
マッチ→ライター
映画→ビデオ→DVD→オンデマンド
郵便→電話→電子メール
ブラウン管→液晶→有機EL
などなど色々思いつきます。

このような代替品の脅威から身を守り成長を続けるにはマーケティング思考が不可欠であると述べておられます。
そして、マーケティングは販売とはまるで違うと語ります。

「販売は売り手のニーズに、マーケティングは買い手のニーズに重点が置かれている」「販売は企業の製品と顧客のキャッシュを交換するテクニックである。その交換によってどんな価値が生まれたかは関係ない。」(マーケティング近視眼、1960年より)

では代替品の脅威から逃れるために事業を再定義する、
そのためには、買い手のニーズを考え、そこから事業のあり方を再考する、マーケティング思考が不可欠ということになります。

よくある命題に、
「なぜ、ビデオカメラを買うのか?」
があります。

・ビデオカメラというモノが欲しいのか?
・ビデオカメラで得られる映像が欲しいのか?
いやいや、人によって違っていて
・小さい子を持つ親にとっては「子供の成長の記録を残したい」あるいはいずれ「それを見て思い出に浸りたい」
・TV局なら「番組を作りたい」あるいは「番組提供を通して会社の使命を果たしたい」
・警備会社なら「契約者の安全を確保したい」
などという具合に考えることができそうです。

最近、新聞業界のお仕事をさせていただきました。

日本の新聞はアメリカと異なり、まだまだ信頼度が高いと言われています。
具体的には、アメリカのメディア全体に対する信頼度が32%(2016年、Gallup調べ)なのに対して日本の新聞に対する信頼度は68.6%(2016年、新聞通信調査会調べ)となっています。

しかしながらそのような新聞であっても、今まさに代替品の脅威にさらされている典型的な業界とも言えます。
マイケル・ポーター博士の5フォース分析をしてみると、少なくとも以下のようなことは言えそうです。

1.業界内競争の激しさ=激しい
〇能力が過剰
〇読者が別の会社に乗り換える経済的・心理的コストが低い
〇撤退障壁が高い
大きな設備投資をしてしまっているので、これを無駄にできないという心理的な圧力
ただ、実は過去の投資はたとえ巨額であってもすべて埋没原価であり、未来に向けた意思決定においては考慮する必要はないのですが、、、
2.代替品の脅威=非常に厳しい
〇パソコン・スマホ・タブレットを使ったインターネットによる情報検索と収集
3.買い手(売り先、顧客)の交渉力の強さ=非常に強い
〇インターネットで無料で情報を検索・収集できる
〇広告メディアとしてもターゲットを絞り込め安価なインターネットにむしろ魅力を感じている
その他省略

ではどうするべきなのか?

例えば、今現在新聞を通して情報提供を行っている対象顧客のニーズを考えてみることです。
読者ごとに考えてみましょう。

1.企業経営者
〇事業における機会を見つけたい。
〇コストを下げるためのネタを探したい。
〇事業における脅威を発見したい。
〇良い資金調達手段を知りたい。
等々
つまり、「企業業績を高めたい」
2.生活者
〇最新のトレンドを知り、それを採用することで周りから一目置かれたい。
〇ちょっとした生活の知恵を知り、便利に生活したい。
等々
つまり、「生活を豊かにしたい」

このようにニーズを探ったうえで、
今度は自らのシーズ(強み、得意技)を棚卸しします。

その為には、自社のビジネスプロセスを上流から下流にかけて見渡し、それぞれにおけるノウハウや人的・物的資源を棚卸しすることが必要です。

これらニーズとシーズを組み合わせることで、新しい機会を見出していくということになります。

「ニーズ指向なんて当たり前」などと思っているそこのあなた、
本当に大丈夫ですか?
知らず知らずのうちに、生産者指向、とにかくうちの製品を売りたい、そうなっていませんか?

 

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ワンコイン以下で学ぶ管理会計における経営的視点

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強みに投資すべし

久しぶりの投稿、ポケモンGOに関する記事で、少し気になったことです。

ゲーム産業は、同じクールジャパンであるアニメや漫画に比べて、政府からの支援が少ないといいます。
経済産業省の担当者らは「ゲーム産業は自力で海外進出できており、支援の必要はない」という認識を持っていると報道されています。
真偽のほどは定かではありませんが、
もし、本当だとすると戦略性の無さに問題を感じます。

どうも、公というものは公平性を重要なメタフレームワーク(高次元の枠組み)にしているため、
強みに大胆に傾斜配分する、つまり戦略的な資源配分ということに不得意のようです。
そのことが日本の競争力低下と無縁ではないでしょう。

強いものをより強く、そのために資源を使う方が投資効率は高くなります。

資源を均等に配分し、いずれの事業も勝利を得られず、結果として組織構成員には小さい果実が公平に分配される、

それよりも、資源は強い分野、成長が期待できる分野に重点配分し、結果として得られた大きな果実を、納得性を大切にして組織構成員に分配することこそが考慮されるべきことです。

そして、資源配分の意思決定に重要な情報を提供するのが管理会計であり、得られた果実を適切な業績評価によって高い納得性のもと配分することを可能にするのも管理会計というわけです。

”公”においては既得権益というものが邪魔をすることは承知の上で、そういう発想は企業はもちろん”公”においても持って欲しい、そんなふうに感じた記事でした。

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鈴木敏文氏が残して下さったこと

ひとつの時代を作った偉大な経営者、鈴木敏文氏が引退され1週間が経ちました。

不幸な幕切れでした。

色んな見方があります。
誰が善玉で誰が悪玉、そんな区別はありません。
誰もが、最終的には事業を通じた社会への貢献を考えてのことだったと理解したいと思います。

それはそうと、鈴木氏の経営はメディアや書籍などを通して接する機会に事欠きません。

仮説検証主義、現状を否定し変化を求め続ける姿勢、ものすごい刺激をいただいた、ある意味私にとっても師のような存在です。

仮説検証主義を管理会計はどう支えることができるのか、そんなことを考えるきっかけを与えてくださったのも鈴木氏でした。

仮説検証を不断に繰り返すことで未来を創出していく、そう言えばある意味当たり前に聞こえますが、
過去の成功体験や同業者の既存の動きに縛られた我々にとって、それはそうたやすいことではありません。

固定観念を持たず、現場や数字などに表れた小さな変化を見逃さない、地道なねばり強い取り組みの先に皆が驚くような未来が待っているのだと思います。

ところで、”Your strategy needs a strategy”(邦訳:戦略にこそ「戦略」が必要だ)というボストンコンサルティンググループが書いた書物があります。
ここでは、戦略パレットというフレームワークを使って、事業環境に応じてどのような戦略的アプローチが有効かを整理しています。

戦略を、「市場の可変性」と「市場の予測可能性」の2軸で整理しています。(下の4つ以外に、苛酷な事業環境下での「リニューアル型」が追加されています)

戦略のための戦略

成功事例を一定の枠組みで整理して示した、後付けの良くあるパターンです。
経営学の多くは、過去事象の抽象化ですから、ある意味やむを得ません。

セブンイレブンやセブン銀行、更に高付加価値のPB商品セブンプレミアムは、ビジョナリー型
仮説検証による不断の改善はアダプティブ型
ということになりそうです。

さて、(自虐的に)コンサルタント風情がこのような枠組みを与えたところで、経営の現場をピクリと動かすこともできない、鈴木氏の経営を見るとそう感じざるを得ないのです。

セブンイレブンを日本でやろう、と鈴木氏が考えた時、小売業界は予想でき変えることができると思った人が果たしてどれだけいたでしょう。

現状を否定し、仮説検証を地道に繰り返し改善を積み重ねることで他チェーンを圧倒できると考えた人が、果たしてどれだけいたでしょう。

我々が学び取らなければならないのは、フレームワーク以前に、

生命の進化の歴史において、生き残ったのは?
“強いもの”でも、”賢いもの”でもなく
“変化したもの”である
ということではないでしょうか。

これまでうまくいっていたから、よそでうまくいっているから、
と自分を納得させ、
そして自ら考えようとせず、楽をする
そんなことへの訣別

自分の頭で考えて環境に適応することでしか生き残れないし、繁栄も無い

“当たり前”を疑う
タブーなど無い、変化こそが善なのだ

心の底からそう思える自分を作ること、

そのことをこの機会に再度確認をしたいと思うのです。

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バックキャスティングの本質

backcasting
 つい先日、ある方から「バックキャスティング」という言葉を聞きました。

 とっても重要な概念なのですが、意外に耳にすることが少ない言葉です。

 現時点から今の様々な状況をを前提としてできることを考え将来の着地点を予想し進む、という「フォーキャスティング」に対して、
将来のあるべき姿から逆算ベースで今やるべきことを考え計画化し実行する、というのが「バックキャスティング」です。

 意味を聞くと、当たり前のようにも思えるかもしれません。

 「フォーキャスティング」は単独で使うと、成り行きになってしまいます。
しかし、未来予想をし、その未来とあるべき未来とのギャップを認識しそのギャップを埋めるためにやるべきことを明らかにする、つまり「バックキャスティング」とセットで使うと意味があります。

 今から15年ほど前、スウェーデン発の環境NGOの日本支部で環境コンサルティング部門の責任者をしていたころ、さかんにこの「バックキャスティング」ということをお伝えしていました。

 その頃にある雑誌に投稿した記事の一部をここで引用させていただきます。

=引用=

 バックキャスティングのことを1つの例でご説明しましょう。2003年5月号の日経エコロジー「読者の声欄」に以下の意見が掲載されていましたのでまず、全文を引用します。

 「ハイブリッド車などの低公害車への乗り換えを促進すると、中古自動車が増え、結果的に廃車も増えると思う。まだ乗れる車を手放してまで低公害車を購入することは、本当に環境のためになっているのだろうか。たとえ、排出ガス対策の遅れている車でも、とことん乗りつぶす方がゴミと資源のことを考えると環境のためになるのではなかろうか。ハイブリッド車など新しい車を次々に開発して市場に投入する一方で、環境優良企業とのイメージアップに努めるトヨタが、偽善者に映って仕方ない。」

 これに対して編集部からは、

「買い替え促進を支持する論拠は、LCA(ライフサイクルアセスメント)分析*の結果、車や家電の環境負荷は、製造や廃棄時よりも使用中の方がずっと大きいことです。」とし、

*ここでのLCAは二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量を対象にしておられます。

 使用中の環境負荷の低減効果の方が廃棄物増加による環境負荷増大よりも大きいと指摘しておられます。

 つまり、現在において車が廃棄物になりゴミの山になったりフロンが放出してオゾン層の破壊につながるという問題より二酸化炭素による温暖化問題の方が重要であるという視点から判断しておられるようです。

 しかしながら、これら2種類(廃棄物問題と温暖化)の環境負荷を科学的に比較することは不可能と言わざるを得ません。

 上記読者の見解と編集部の見解はいずれも現在からの視点で物事を考えるフォーキャスティングによっています。

 一方この問題をバックキャスティングによって考えてみると、まず「持続可能な社会における自動車とは何か」ということを明らかにします。

 その結果が例えば、「燃料電池車」あるいは「バイオエネルギーを使った車」でかつ長寿命で、リサイクルも完全になされている状態がイメージされたとします。では、「それを早く実現するためには現在どのような行動がそれを支援することになるか」という思考をします。

 これに対する答えは多分「化石燃料に依存しない持続可能な自動車開発を勇気づけるために、もしくは持続可能な自動車との技術的共通点の多い自動車を購入する。そして廃棄物のリサイクル比率を高める。」ということになります。

 現在の前提条件を元にどちらかを選ぶのではなく、あるべき姿からバックキャステイングをすることにより、このようなトレードオフの問題を解決するステップが何なのかが見えてきます。このように、フォーキャステイングとバックキャステイングではその思考プロセスに違いがあるということです

=引用ここまで=

 現状を前提とした思考では大きく未来を変えることはできません。

 誰もがおそらく考え方自体は知っている、でも十分に使いこなせていない「バックキャクスティング」、強く意識しなければなりませんね。

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ネガティブ情報からイノベーション

sanada_japan昨晩のワールドビジネスサテライトで紹介された企業、

株式会社真田ジャパン、ご覧になりましたか?

廃棄物処理業、
汚いイメージがつきまとうゴミ回収、

そこに、逆3K戦略と銘打った見事な逆転発想がありました。

きたない → 「きれい」な制服、収集車
きつい  → 「気持ちよく」働ける職場
危険   → 「家族」も安心

黄色いシャツに蝶ネクタイ、毎日きれいにクリーニングされた制服でゴミを回収

ゴミ収集車もピカピカに磨き上げています。

だから、街の人たちも気軽に声をかけ、会話がはずみます。

家族も安心できるように、母親や奥さんにボーナス支給

社長はかつて高齢者の社員が、お孫さんから、
「おじいちゃん、あんな汚い仕事、やめて!」と言われたのを知り、愕然としたとか。

でも愕然、で終わりません。
これを逆手にとって生まれたのがこの逆3K戦略とか。

○社員のモラールが向上
○会社イメージもアップ
○気持ちの良いサービスで売上もアップ

固定観念にとらわれず変革する発想力、

特にネガティブ情報に接した時に、それを「変革の種」と理解するすることを習慣化すること、それが大事です。

顧客からクレームがあった、
納期遅れが発生、
将来を嘱望していた社員が突然退職、

何故?何故?真因は何?
もしかしたら、そこから差別化の種が生まれるかもしれません。

出光、昭和シェル、対等合併!? 経営統合方式とメリット・デメリット

出光と昭和シェル出光と昭和シェルの経営統合のニュースが駆け巡っています。

確か今年の春ぐらいでしたか、出光が昭和シェルを買収するという話題があったと記憶しています。

しかし、このたびのものは、あくまで対等合併であると報じられています。

ただ、手続きとしては出光がまずロイヤル・ダッチ・シェルが保有する株式(発行済の33.3%)をキャッシュで買い取り、残りを公開買付もしくは存続会社になるであろう出光の株式との株式交換で買収するということですから、少なくとも一旦は買収の形をとることになります。

最初から新会社の株式と交換する方式の合併ではありません。

それはともかく、なぜ買収から合併に変わったのか?

そこで、経営統合の方式ごとのメリット・デメリットを思いつく範囲で表にしてみました。

経営統合方式のメリット・デメリット買収して子会社化するというのは、買収する側からは支配力を及ぼすというメリットがありますが、それは逆に言うと買収される側の抵抗を当然招きます。

このケースでは、現場の系列GSからの反発があったようです。

多くの上場企業が採用する持ち株会社方式も選択肢としてはありそうですが、それでは十分な経営統合メリットを得られないと判断したのでしょう。

しかし、合併となるとまたそれはそれで多くの困難を伴います。

多くの銀行の苦労を考えれば、容易に想像がつきます。

実は私は、過去の2度合併を経験しています。

1度目は最初に勤務した海運会社の合併です。この時は事実上吸収する側にいました。
2度目はシンクタンクによる同一銀行グループのコンサルティング・ファームの吸収です。この時は吸収される側、つまりコンサルティング・ファームのメンバーでした。

1度目の時には、今思えばいじめにあたるようなこともあった思います。
吸収される側は、仕事のやり方は全部吸収する側のものに合わせなければなりません。
当然、不慣れですから失敗も多い。そして吸収した側の社員に教えを請わなければなりません。
そこに支配・被支配の関係が生まれます。

2度目の時は、あまりに異なる文化が融和を阻害していたように思います。
シンクタンク側は研究者肌、コンサルティング・ファーム側は独立独歩の現場主義、
後者は新しいシステムや仕事のやり方になじまず、会社に顔をだすことを極力避けていたように思います。

文化の融合は言うほど簡単ではありません。
20年たっても30年たっても派閥が残り続けることも珍しいことではありません。

事実上吸収する側が全てを押し付けるような姿勢が真の融合を阻害することだけは少なくも明らかです。

一般社団法人日本管理会計教育協会、来年早々の船出に向けて順調に準備中です。

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M&Aの様々な姿

HosokawaMicron一昨日、日本管理会計学会に参加しました。

ホソカワミクロンさんが、特別講演で自社の予算制度やM&Aについて特別講演をしてくださいました。

ホソカワミクロンは、大阪枚方に本社を構える上場企業で、

粉体技術を核にした会社で、主な財務指標は、こんな感じです。
連結売上高 約500億円
連結営業利益率 約7%
連結自己資本比率 約55%

そして、世界中に事業を展開しておられ、
12ヵ国、17社、21拠点のグローバルな企業グループを構成しておられます。

私にとって興味深かったのは、懇親会の時に直接お聞きした話でした。

それは、M&Aの形態に関することでした。

今や日本企業も熱心にM&Aを経営戦略として採用するようになりました。

ただ、その形態や目的は必ずしもひとつではありません。

例えば、日本電産はM&Aは成長を続けている企業グループして有名ですが、その目的について自ら
”技術・販路を育てあげるために要する「時間を買う」”
と述べておられますが、
特徴を並べてみると、こんな感じでしょうか。

・M&Aによって新規の技術と新規マーケットを獲得
・合併買収先企業の経営には独自の経営ノウハウ3Q6Sを中心に積極的に介入し、経営を立て直す
そのためには人の派遣も含めての統合が行わていることは、例えば有価証券報告書の「関係会社の状況ー関係内容」において、ほとんどの子会社で”役員の兼任”が行われていることから明確です。
日本電産の有価証券報告書「関係会社の状況」

ほかに、M&Aを積極的に行っている例としては、誰もがすぐに思いつくグループがあります。
イオンなどはその代表例でしょう。
イオンにおけるM&Aは明らかに規模の経済性が主たる目的です。
メーカーに対するバイイングパワー、物流センター・配送の統合による規模メリット、プライベートブランド開発における販売力、いずれをとっても規模追求が主たる目的だと想像できます。

これらに対してホソカワミクロンのM&Aは少し異なります。
その特徴は、合併買収先企業に対するこんな方針に表れています。
・一切人を派遣しない
・経営に介入しない
更に言うと、合併買収ばかりではなく、時には売却も行っておられ、
・M&Aが規模の拡大には必ずしもつながっていない
(規模の経済性が無いという意味ではありません)
という特徴があります。

では、目的は何か?
それはひとえに技術の相互融通なのです。

よく似通っているのは、森精機によるドイツの会社DMGの完全経営統合でしょうか。
日本電産も技術の取得が主たる目的ですからその点は共通ですが、手法が異なります。

それぞれの業界を取り巻く環境の違いが影響します。

・規模の経済性が効く業界
流通、コモディティー化した製品分野
・技術の優位性が競争力に直結する業界

手法の違いは、M&Aの対象の違いの影響もありそうです。
積極介入型は、
・国内企業
・比較的小規模
・技術はあるが、経営力に劣る

・・・

様々に考えさせられたご講演でした。

人間がやるべき仕事って何だろう?

figure_2
今日は最近の面白かった本を一冊ご紹介です。

「ザ・セカンド・マシン・エイジ」

約200年前の産業革命によってもたらされた劇的な変化、

その産業革命によって、蒸気機関が肉体労働にとってかわったように、
いま、コンピュータは知的労働を肩代わりしようとしているという脈絡で語られます。

面白いのは、ある意味言い古されていますが、

ムーアの法則です。

「素子の性能は、1年間(現在では18ヶ月ごとと言われているらしい)に大よそ2倍になる」

ここで登場するのが王様とチェスの発明者の話、

チェスを気に入った王様、この発明者に褒美を与えると、

発明者は言います。

「最初のマス目に米粒を1粒、2番目のマス目に2粒、3番目のマス目に4粒・・・という具合に前のマス目の倍の米粒を・・・」

そんなものでよいのかと、王様は了承します。

チェスのマス目は64あります。

さて、64番目には何粒乗るでしょうか?という話です。

計算する気もしませんが、

922京粒とのこと、

数字が大きすぎでイメージできません。

ちなみに半分の32マス目では、40億粒、これならまだイメージできます。

そこで著者は言います。

64マスの半分の32マス、ここから以降が想像もつかないほど加速度的に増えていくのだと、

1958年、米商務省経済分析局の調査対象として「情報技術」が登場してから18カ月×32は2006年になる計算とか、

2006年から、我々の目の前に、「えっ」と思うような革命的進歩が提示されるようになったと言います。

iphoneのsiri

すでに日常に入り込みつつあるロボット

自動車の自動運転

ちょっと前まではSFの世界でした。

これまでの変化はこれから起きることを予想する指針にはならないと言います。

「数年先にはスーパーコンピューターの性能が玩具に搭載されるようになるだろう」

と言います。

著者は、このような変化は、富の偏在を加速すると言います。

受け取るべきメッセージは、

「想像もできない明日に備えよ!」

ということでしょうか。

想像力を働かせることが大事です。

例えば、

「それって本当に人間にしかできないのだろうか?」

不可欠な発想です。

でも一方で、

「人間にしかできないことって何だろうか?」

その問いかけから時としてびっくりするような付加価値が生まれます。

仮説をたてる練習材料はそこら中にある!

沖縄201509写真集約
この24・25日の2日間、沖縄に出張に行ってきました。
空き時間に、国際通りそばの牧志公設市場に土産物(大量の海ブドウ、紅芋タルト、行列店のサータアンダギー、ラフテーなど)を買い求めに行きました。
IMG_4475
買い物後、2階の食堂街で昼食をとりました。(ナーベラーの味噌煮にラフテーがトッピングされた魅力的な一品↓↓↓)

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さて、本題です。
この食事をとった店は、下の図(思い出しだし作ってみました)の大繁盛店でした。特に大きな理由もなく入ったのですが、後で気づいたことがありました。

牧志公設市場内の飲食店、何故こんな繁閑差があるのか?
私の入ったお店は、かなりの混雑ぶり、客もひっきりなしに入店しています。
ところが、このお店と隣接した、ほぼ似たようなお店(図中下の客ゼロ店)は、私が大繁盛店に滞在した30分ほどの間についにひとりの客も迎えることがありませんでした。
(右写真の奥が繁盛店、手前が客ゼロ店)

何故?

本当のところはわかりません。
でも、こういった事象は、仮説立案練習のとっても良い題材です。

仮説を立案するための情報はどうやって得るのか?

a. 必要最低限のデータ分析を行う
b. 現場の話を聞く
c. 観察する

この練習題材では、aとbは得られません。
ですから、30分ほど現場で観察してみました。
少なくとも30分で得られた事実には以下の事柄がありました。

【事実】
ア.エスカレーターを上がった人たちは、図中①の場所に控える大繁盛店の客引きに、いったんたじろぎ左方向へ回遊する。
イ.そして一周回ったら、同じく①の上手なおばさんの口上にひかれて入店する。
ウ.客ゼロ店の②の店員さんは店内から外を眺めているだけで、積極的に声掛けをしていない。
エ.2つのお店の境界がよくわからない=ひとつのお店に見える

では、観察に基づいて、仮説をたててみましょう。

【原因と思われる仮説】
1.たくさんの客が入っている一見繁盛店の方が安心して入れる。
2.はじめての人には2つの店が一体化して見え、とりあえず真ん中から入る→結果として繁盛店に入る。
3.店の中から店員がただ外を見ているので、かえって入りにくい
4.客ゼロ店の味が悪い、価格が高い、メニューに魅力が無い・・・一見客には明確にはわかりにくいとは思いました

では、仮説に基づいて、客ゼロ店の業績向上策としての仮説を立ててみましょう。

【解決策の仮説】
仮説のためにはイシューツリーを描くことも有効です。
イッシューツリーを描く際にはフレームワークを使うことも便利です。

ここでは、4P(Product, Price, Promotion, Place)のフレームワークを念頭に置いて考えてみましょう。

ⅰ)まず、大繁盛店と同一視されているかもしれない、という点に着目
月並みですが、コンセプトの見直しと明確化は避けて通れないでしょう。
例えば、
・観光客に、アグー豚のおいしさを、豊富なメニュー提案によって訴える

ⅱ)コンセプトが決まったら、お隣と明確に異なる店づくり
・店の外見を変え、隣の店とはっきりと際立った違いを主張する
・コンセプトを分かりやすく表現した看板をエスカレーターを上がったらすぐに目に飛び込んでくるように設置→ここで記憶させる
・回遊して一周回ってきた客に、店頭で声がけ
ここで、できれば時間限定、数量限定などといった希少性の訴求、
有名人の来店をそれとなく見せる=権威づけ
アグー豚の何かのちょっとした料理を試食させる(市場の中なので違和感がない)=返報性
などといった心理テクニックを使うのも効果的でしょう。

ⅲ)小技ですが、昼時には”サクラ”を配置する

あくまで仮説ですから、あたっているかどうかはわかりません。

実際には、計数データの分析や、店員さんからのインタビューなどの情報をもとに仮説をたてるべきでしょうが、
このような日常の出来事をもとに仮説をたてる練習をすることはビジネスセンスを向上させるのに役に立ちます。

なお、仮説に基づく対策を立案し実行したら、その結果をしっかりとモニターして検証するべきことは言うまでもありません。

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再びワタミの話題、介護事業売却における財務的事情

ワタミの介護
再びワタミが話題になっています。

今度は、介護事業売却の話題、すでに買い手のめどもつきかけているとか。

新聞報道では、ワタミの3事業(外食、宅食、介護)の中の稼ぎ頭で、約23億円の営業利益を獲得しているとのこと、
確かにセグメント情報によると、2,399百万円(H.27.3期)の利益を上げています。
3事業の分析はこちらの記事をご覧ください

また、売却額も200億円程度になると報道されています。

資産が約720億円、負債が約700億円ですから、純資産は約20億円という計算になりますから、約10倍の価値が認められているということです。

何故それほどの評価がつくのか?

業界環境を知っておく必要があります。

平成25年度の市場規模は約7,500億円で、10年後には団塊の世代が後期高齢者を迎え市場は急拡大することが予想されています。

まさに、成長期ど真ん中の市場であるということになります。

そんな中で、ワタミの地位はというと、

平成25年度のデータでは、
業界第7位
シェア4.7%
にあまんじています。

業界トップはニチイ学館で36.2%のシェアです。

有名なPPM(Product Portfolio Management)では、いわゆる「問題児」に属する事業になります。
PPM

成長期の事業ですから、多額の追加投資が求められます。
更に、競争が激しいですから、なかなか投資を回収できるほどの利益があがりません。
シェアが低いので規模の経済性が働きませんから、その傾向は一層強まります。

結果として、利益はそこそこ得ていてもキャッシュフローは相当厳しいのではないかと推測できます。
検証していました。

有価証券報告書のセグメント情報を整理したのが下の表です。
ワタミ介護事業のセグメント情報

予想通りです。
キャッシュフローは最近6期、ずっとマイナスが続いています。

つまり、市場の将来性はあるが、その成長に乗り、競争に勝ち、いずれ「金のなる木」に育て上げるにはまだまだ先行投資が必要で、
その資金負担に耐えられなくなった、
それが正しい見方のようです。

ところで、売却金額200億円というのは、仮に税引き後の目標投資利回りを5%とすると年獲得キャッシュは10億円、10%とすると20億円程度はかせげるだろうという計算になります。

確かに、投資が一巡し市場が安定してきた折にはそれぐらいは十分達成できそうな水準に思えます。

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