4月7日・8日の2日間、メルコ学術振興財団創立10周年記念国際シンポジウムに出席してきました。

この財団は、日本的経営の考え方や技術を世界に発信することを目的に、パソコン周辺機器のメルコが資金を出す公益財団法人ですが、今現在は管理会計分野の日本での実務・研究成果を世界に発信しています。

そのようなことから、今回も管理会計に関するいくつかの報告がありましたので、実務に役に立ちそうなことを中心にいくつかご紹介しておきたいと思います。

1.「JALにおけるアメーバ経営による変革について」(日本航空執行役員 米澤章氏)
これまで公開されてきた情報も含めて、参考になるそうな点を箇条書きにします。

①「アメーバ導入前は、各部署はコストを考えずにそれぞれの担当においてサービスの向上のみを求めて業務を行っていた。アメーバによって収支責任を持たせることによって、特にコスト意識が高まった」

この点は、アメーバにとどまらず独立採算的組織運営の効果として共通に指摘される点です。
ただ、独立採算的組織運営を成功裏に行うにはいくつか課題があります。
・会社全体ではなく各部門の部分最適が優先されるという弊害があり得る
・内部振替価格や本社費共通費の配賦方法を誤ると逆にモラールが低下する恐れがある
・セクショナリズムが横行する恐れがある
このような弊害をいかにクリアしたのか、そこが最も明らかにしたい点です。

②「収支はアメーバ間の社内取引によって計算する仕組みにした」
③「ひとつのアメーバは10~15人ぐらい、業務全体を各自が見渡せる範囲であることが重要」

解説いただいたことを踏まえて、想像も交えて解説すると、例えば、路線事業本部は客室部門や整備部門からサービスを購入し、営業部門である旅客販売統括本部に席を売る、客室部門はフライトごとにサービスの対価を受け取り、一方でサービス原価を支払ことで収支責任を負うなどということかと思われます。

④内部取引価格の設定は明言されなかった

ただ、「マーケット価格」という言葉がレジュメにあったことから、おそらく市場価格を基本において、当事者間の交渉によって決めてるのではないかと想像されます。
この点はこれまで出版された調査レポートや稲盛氏ご自身の著書にも交渉価格を基本とすることが明示されています。

⑤「月1回の業績報告会はまる2日間かけてみっちりと行われる」

後で出てくるフィロソフィーに照らし合わせ、相当厳しい指摘と議論がなされているのだろうと想像できます。

⑥「JALフィロソフィーを作りその教育に、例えば2時間/回×25回×5年間という具合に多頻度高密度に教育を実施した。稲盛氏の考えをJALの実態に当てはめて丁寧に紐解き共有をはかるというこの作業と、その結果として収支の改善につながるということによって、フィロソフィーが浸透していった」

このような徹底した教育こそがアメーバ経営を実効ならしめるうえで最も重要なポイントだろうと想像されるわけです。単なる内部振替による部門別損益だけなら、下手をすると部分最適にばかり走り顧客視点を持たないセクショナリズムに陥る恐れがあり、その意味で価値観の共有はいくらこだわってもこだわりすぎるということはないということなのです。

つまり、アメーバはひとつの仕組み、いわば土地の上に立つ建物、その建物を頑強ならしめるのは仕組みそのもの以上に、土台であるということですね。

(つづく)

banner