「マーケティング近視眼」という言葉があります。
セオドア・レビット氏が同名のタイトルの論文で提唱した概念で、自らの事業を生産者指向で狭く定義してしまうことで、代替品の出現によって衰退に追い込まれる失敗のことを意味します。

氏は、輸送事業ではなく鉄道事業と定義した鉄道会社、エンターテイメント事業ではなく映画事業と定義した映画会社などたくさんの例を挙げておられます。

氏は言います、「代替品の現れない製品はない」と。

少し考えても、
レコード→CD→MD→インターネットダウンロード
フィルム撮影→デジタル撮影
銀塩カメラ→デジタルカメラ→スマートフォン
白熱球→蛍光灯→LED
マッチ→ライター
映画→ビデオ→DVD→オンデマンド
郵便→電話→電子メール
ブラウン管→液晶→有機EL
などなど色々思いつきます。

このような代替品の脅威から身を守り成長を続けるにはマーケティング思考が不可欠であると述べておられます。
そして、マーケティングは販売とはまるで違うと語ります。

「販売は売り手のニーズに、マーケティングは買い手のニーズに重点が置かれている」「販売は企業の製品と顧客のキャッシュを交換するテクニックである。その交換によってどんな価値が生まれたかは関係ない。」(マーケティング近視眼、1960年より)

では代替品の脅威から逃れるために事業を再定義する、
そのためには、買い手のニーズを考え、そこから事業のあり方を再考する、マーケティング思考が不可欠ということになります。

よくある命題に、
「なぜ、ビデオカメラを買うのか?」
があります。

・ビデオカメラというモノが欲しいのか?
・ビデオカメラで得られる映像が欲しいのか?
いやいや、人によって違っていて
・小さい子を持つ親にとっては「子供の成長の記録を残したい」あるいはいずれ「それを見て思い出に浸りたい」
・TV局なら「番組を作りたい」あるいは「番組提供を通して会社の使命を果たしたい」
・警備会社なら「契約者の安全を確保したい」
などという具合に考えることができそうです。

最近、新聞業界のお仕事をさせていただきました。

日本の新聞はアメリカと異なり、まだまだ信頼度が高いと言われています。
具体的には、アメリカのメディア全体に対する信頼度が32%(2016年、Gallup調べ)なのに対して日本の新聞に対する信頼度は68.6%(2016年、新聞通信調査会調べ)となっています。

しかしながらそのような新聞であっても、今まさに代替品の脅威にさらされている典型的な業界とも言えます。
マイケル・ポーター博士の5フォース分析をしてみると、少なくとも以下のようなことは言えそうです。

1.業界内競争の激しさ=激しい
〇能力が過剰
〇読者が別の会社に乗り換える経済的・心理的コストが低い
〇撤退障壁が高い
大きな設備投資をしてしまっているので、これを無駄にできないという心理的な圧力
ただ、実は過去の投資はたとえ巨額であってもすべて埋没原価であり、未来に向けた意思決定においては考慮する必要はないのですが、、、
2.代替品の脅威=非常に厳しい
〇パソコン・スマホ・タブレットを使ったインターネットによる情報検索と収集
3.買い手(売り先、顧客)の交渉力の強さ=非常に強い
〇インターネットで無料で情報を検索・収集できる
〇広告メディアとしてもターゲットを絞り込め安価なインターネットにむしろ魅力を感じている
その他省略

ではどうするべきなのか?

例えば、今現在新聞を通して情報提供を行っている対象顧客のニーズを考えてみることです。
読者ごとに考えてみましょう。

1.企業経営者
〇事業における機会を見つけたい。
〇コストを下げるためのネタを探したい。
〇事業における脅威を発見したい。
〇良い資金調達手段を知りたい。
等々
つまり、「企業業績を高めたい」
2.生活者
〇最新のトレンドを知り、それを採用することで周りから一目置かれたい。
〇ちょっとした生活の知恵を知り、便利に生活したい。
等々
つまり、「生活を豊かにしたい」

このようにニーズを探ったうえで、
今度は自らのシーズ(強み、得意技)を棚卸しします。

その為には、自社のビジネスプロセスを上流から下流にかけて見渡し、それぞれにおけるノウハウや人的・物的資源を棚卸しすることが必要です。

これらニーズとシーズを組み合わせることで、新しい機会を見出していくということになります。

「ニーズ指向なんて当たり前」などと思っているそこのあなた、
本当に大丈夫ですか?
知らず知らずのうちに、生産者指向、とにかくうちの製品を売りたい、そうなっていませんか?

 

100yen

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