明治大学9月1・2日に東京の明治大学で開催された日本管理会計学会に参加しました。

今回の学会では、バランスト・スコアカードとも関係が深い「インタンジブルズ」(無形資産)への関心がより一層高まっている印象を受けました。

インタンジブルズとは「財貨の生産またはサービスの提供に貢献するかそれらに用いられ、その利用をコントロールする個人または企業に対して将来の生産的便益を生み出すと期待される非物質的な要因」(Blair an Wallman, 2001, PP.51-56)のことを言います。(出典:日本管理会計学会誌「管理会計」2010年第18巻第2号「インタンジブルズとレピュテーション・マネジメント」櫻井通晴先生著)

具体的には「すぐれた研究開発成果、技術革新や経営上の革新、独自の組織デザイン、人的資源、高い評判など」(出典:「コーポレート・レピュテーションの測定と管理」PP.1 櫻井通晴先生著、同文館出版)

そのような背景の元、若手の研究者の先生方が販管費と業績との関係を分析した報告などをしてくださいました。(インタンジブルズは貸借対照表に資産として計上されず、販管費の中で費用として計上される)
日本において下方硬直性の高い(容易には削減できない)人件費を多く含む販管費全体と将来の売上との相関を分析するのは無理があるのではないかと、私個人の印象としては感じました。

しかし、インタンジブルズと業績との関係に関する研究は、いずれ実務界にも意義ある成果を提供してくださるだろうと期待しています。

さて、実務家として、特に最近の仕事との関係で興味深かったご報告が2つありました。

一件目は、山形大学の准教授、柊紫乃先生のご報告です。
柊先生は、中小企業の管理会計を実際の企業現場に頻繁に足を運んで現場の人たちと議論し一緒に仕組み作りを行う、まるで我々コンサルタントのようなユニークな先生です。
先生からは、実例のご報告をいただきました。
面白かったのは、見積原価のシミュレーションシステムです。
「直近の工場の稼働時間をベースに受注製品の基本生産能力、受注見込み数量をパラメータとして」簡単に見積原価を計算するシステムを構築しておられます。

見積原価は、通常1定期間は前提条件を固定化して行うことが多いと思いますので、受注状況を迅速に反映したシミュレーションシステムという点がユニークだと感じました。

私がずっと提唱している「量産効果を先取りした価格見積り」、つまり前提としての操業度を未来における仮定のものとして行う柔軟な見積原価計算ということですが、これと共通の考え方を感じ、未来志向でのシミュレーションも行われるのかという点をご質問したところ、「いかなる前提でもシミュレーションできる仕組み」とのことで、我が意を得た気持ちでした。

二件目は、東京理科大学名誉教授 田中雅康先生のご報告でした。

原価企画の理論と実践

田中先生は学会の重鎮で原価企画・VEにおける日本の第一人者でいらっしゃいます。
後で知ったのですが、1935年生まれでいらっしゃいますから、今年81歳になられますが、とてもそんなお歳とは見えない、溌剌とした厳しさと少しのユーモアを含んだとってもすてきなご報告でした。

ちなみに私が今から20年あまり前30代の頃に読んだこの本は、VEを学ぶ方の必携書です。私の本はもうぼろぼろになっています。

VEバリューエンジナイアリング

内容は、コストテーブルに関するご提言でした。

・日本を代表するような企業でも、見積原価計算の基本的具備事項が守られておらず、原価計算に詳しい先生方はもっと産業界の指導をしなきゃいけない、との厳しいご指摘がありました。

・見積原価計算の発展段階を具体的にお示しいただきました。
例えば、製造原価以外の原価見積への拡張(梱包、物流などの原価見積)、競合品の原価情報、将来の主要な材料などの価格変動予測モデル、開発設計関連システムと連携する原価見積システム(設計変更による原価シミュレーション等)、など

・見積原価計算システムの高度化により、見積原価計算は専門家が介在しない一般的業務化することができる。

なかなか、すべてを理解しここでご紹介するには私の力が不足していますが、実務の観点から非常に示唆に富んだご報告でした。

学会報告は、ともすれば調査分析技法に多くの労力を割いたわりには実務界に対する示唆に乏しいものが少なくありませんが、
私にとって、産業界ともつながりの多い先生方の問題意識を知る上でとっても貴重な機会になっています。

次回は是非、私からも事例報告ができれば考えております。

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