Wedge3月号の特集「米国流ガバナンスが企業を弱くする」はなかなか読み応えのある内容でした。
ずっと思っていたことが事実を踏まえてわかりやすく語られています。

アメリカ流のガバナンスにおいては、株主の支持を得るには、経営者は数値目標を掲げて短期的な利益を上げることが求められます。
その結果、長期的な研究開発投資よりも、短期的なコストカットやM&Aによる短期的な利益獲得を重視するようになります。

旺盛なベンチャーがイノベーションを担っているアメリカでは、それでも社会全体としてはバランスが取れていますが、そのようなバックグラウンドが無い日本において同じようなガバナンスを行うと、企業の力は確実にそがれると主張されています。

ちなみに、アメリカン航空では、短期的に業績を高めるために従業員の給料を総額400億円削減し、それによって企業価値を上昇させた経営陣はその後240億円に相当する株をボーナスとして受け取ったとか。
株主の利益を高めた経営者が上げた利益よりも少ないボーナスを受け取るのは当たり前と考えることが普通(?)であるとか。
なんともおぞましい株主偏重主義です。

そこには、株主と雇われ経営陣以外のステークホールダー(従業員、取引先、生活者、長期安定保有株主、金融機関など)の視点は一切ありません。

伊藤レポート(http://www.meti.go.jp/press/2014/08/20140806002/20140806002.html)では、最低でもROE8%を目指すべし、としています。
経済産業省が無批判にアメリカ流株主偏重主義経営を支持しているように受け止められかねません。

ROE=純利益÷株主資本

当たり前ですが、ROEを高めるためには、分子の純利益を増やすか、もしそれができなければ分母の株主資本を減らすことで高めることができます。

ROE=総資本対純利益率×財務レバレッジ
=(純利益÷総資本)×(総資本÷株主資本)

財務レバレッジは株主資本比率(株主資本÷総資本)の逆数ですがら、株主資本比率を低めることによって安全性を犠牲にしてでも株主の期待に応える、という関係が成り立ちます。

もちろん、株主資本比率を高めることばかりに熱心にならず、適正な規模の借入を行いそれに対する金利を超えるリターンを目指す経営(=財務レバレッジを高める経営)は時には重要です。

しかし、事業の収益性(総資本対純利益率)を高めることができず、財務レバレッジをやみくもに高めることで株主の期待に応えるというのはどう考えても本筋ではありません。
現実には社債発行などによって得たキャッシュを使って自社株買いを行うことで財務レバレッジを高めるなどという方法がまかり通っています。

このようなことは単に短期保有による差益にしか興味の無い短期保有株主の利益に応えているだけ、ということなのだと考えられます。

Wedgeでは、長期的視点からの企業業績を評価する視点、長期的視点からの経営が行い易い法律などの制度の研究の必要性が提言されています。

企業は他社と同じ事をしていては繁栄できない。
環境変化に適応しつつ他社との差別化の道をさぐる、それが繁栄の道であることは論を待ちません。

国も同じです。
日本独自の道=差別化の道なしにこれからの国際社会でのプレゼンスを高めることはできないでしょう。

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