backcasting
 つい先日、ある方から「バックキャスティング」という言葉を聞きました。

 とっても重要な概念なのですが、意外に耳にすることが少ない言葉です。

 現時点から今の様々な状況をを前提としてできることを考え将来の着地点を予想し進む、という「フォーキャスティング」に対して、
将来のあるべき姿から逆算ベースで今やるべきことを考え計画化し実行する、というのが「バックキャスティング」です。

 意味を聞くと、当たり前のようにも思えるかもしれません。

 「フォーキャスティング」は単独で使うと、成り行きになってしまいます。
しかし、未来予想をし、その未来とあるべき未来とのギャップを認識しそのギャップを埋めるためにやるべきことを明らかにする、つまり「バックキャスティング」とセットで使うと意味があります。

 今から15年ほど前、スウェーデン発の環境NGOの日本支部で環境コンサルティング部門の責任者をしていたころ、さかんにこの「バックキャスティング」ということをお伝えしていました。

 その頃にある雑誌に投稿した記事の一部をここで引用させていただきます。

=引用=

 バックキャスティングのことを1つの例でご説明しましょう。2003年5月号の日経エコロジー「読者の声欄」に以下の意見が掲載されていましたのでまず、全文を引用します。

 「ハイブリッド車などの低公害車への乗り換えを促進すると、中古自動車が増え、結果的に廃車も増えると思う。まだ乗れる車を手放してまで低公害車を購入することは、本当に環境のためになっているのだろうか。たとえ、排出ガス対策の遅れている車でも、とことん乗りつぶす方がゴミと資源のことを考えると環境のためになるのではなかろうか。ハイブリッド車など新しい車を次々に開発して市場に投入する一方で、環境優良企業とのイメージアップに努めるトヨタが、偽善者に映って仕方ない。」

 これに対して編集部からは、

「買い替え促進を支持する論拠は、LCA(ライフサイクルアセスメント)分析*の結果、車や家電の環境負荷は、製造や廃棄時よりも使用中の方がずっと大きいことです。」とし、

*ここでのLCAは二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量を対象にしておられます。

 使用中の環境負荷の低減効果の方が廃棄物増加による環境負荷増大よりも大きいと指摘しておられます。

 つまり、現在において車が廃棄物になりゴミの山になったりフロンが放出してオゾン層の破壊につながるという問題より二酸化炭素による温暖化問題の方が重要であるという視点から判断しておられるようです。

 しかしながら、これら2種類(廃棄物問題と温暖化)の環境負荷を科学的に比較することは不可能と言わざるを得ません。

 上記読者の見解と編集部の見解はいずれも現在からの視点で物事を考えるフォーキャスティングによっています。

 一方この問題をバックキャスティングによって考えてみると、まず「持続可能な社会における自動車とは何か」ということを明らかにします。

 その結果が例えば、「燃料電池車」あるいは「バイオエネルギーを使った車」でかつ長寿命で、リサイクルも完全になされている状態がイメージされたとします。では、「それを早く実現するためには現在どのような行動がそれを支援することになるか」という思考をします。

 これに対する答えは多分「化石燃料に依存しない持続可能な自動車開発を勇気づけるために、もしくは持続可能な自動車との技術的共通点の多い自動車を購入する。そして廃棄物のリサイクル比率を高める。」ということになります。

 現在の前提条件を元にどちらかを選ぶのではなく、あるべき姿からバックキャステイングをすることにより、このようなトレードオフの問題を解決するステップが何なのかが見えてきます。このように、フォーキャステイングとバックキャステイングではその思考プロセスに違いがあるということです

=引用ここまで=

 現状を前提とした思考では大きく未来を変えることはできません。

 誰もがおそらく考え方自体は知っている、でも十分に使いこなせていない「バックキャクスティング」、強く意識しなければなりませんね。

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