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管理会計においては、費用を次の2つの種類に分解して管理をすることは多くの方がご存知でしょう。

○変動費
他の条件が変わらなければ、一定の操業度の範囲内では、営業量(操業度、具体的な指標としては「売上高」「生産高」「販売数量」「生産数量」など)と比例的に増減する費用

○固定費
他の条件が変わらなければ、一定の操業度の範囲内では一定の費用。(但し、通常前提条件が変化するので営業量とは関係なく他の原因で変動する費用と言った方が正確)

企業(業種)によって、変動費と固定費の構成はかなり異なります。

例えば、多くのサービス業においては発生する費用の大半は固定費になります。(固定費型企業)

ホテルや旅館が典型例です。航空会社のような大きな設備投資を必要とする業種も固定費型企業です。

これら固定費型企業においては人や設備が空転することを極力避けなければなりません。
人や設備に係る費用の多くはそれらが使われる使われないにかかわらず発生しますので、たとえ多少販売価格を下げてでも販売量を確保することが極めて重要です。

そのために、異なった市場に異なった価格を適用するいわゆる「差別価格政策」がよくとられます。

ホテルや旅館が、曜日別や季節別に価格を変えていること、航空会社が早期割引運賃を適用していること、ボーリング場などが学割や曜日別価格設定を行っていることなどがその例です。

固定費型においては、変動費率が低いですから、元々十分なマージンがあり、多少の値引きをしても十分に利益を確保することができるのです。

これに対して変動費が多いタイプ、典型例が卸売業ですが、これらの企業においては価格を下げて無理して売上を取るよりも、むしろ限界利益率(注)を少しでも引き上げる努力がより重要であると良く言われます。
(注)(売上高-変動費)÷売上高

「販売することこそが卸売業の使命なのだから売上こそが重要」との想いが強い卸売業の方々にとっては全く逆の論理に思えるところです。

この論理が正しいのかどうか、試算してみましょう。

卸
例えば、今売上高10,000百万円、限界利益1,200百万円、つまり限界利益率12%の卸売業があったとします。

来期の目標として売上高を10%アップ、つまり売上高を1,000百万円増加させることが求められているとします。
この売上増加のために価格を引き下げ、全体の平均の限界利益率が11.0%になったとすると、限界利益総額は11,000百万円×11.0%=1,210百万円となります。(A)

このように売上増加によって利益を増やすのではなく、限界利益率アップ(価格アップもしくは仕入価格ダウン)によって同じだけ利益を増やすとすると、1,210百万円の限界利益を得るために必要な限界利益率は

1,210百万円÷10,000百万円=12.10%

つまり、わずか0.1%のアップで良いことになります。(B)

価格を1%ほど引き下げることで売上高を10%アップさせるのと、売上高を維持しなから限界利益率を0.1%アップさせるのといずれが簡単か?一般には後者であるといわれています。

(もちろん、価格を下げずに売上高を増加させる、あるいは売上高も限界利益率もともに改善することが良いのは言うまでもありません)

変動費型の企業というのは、薄利多売型ですから、ちょっとでも限界利益率を改善するとそれがもともと規模の大きい売上全体に掛け算されるのでレバレッジが効いて効果的であるということなのです。

いずれを選ぶか、それぞれの企業が置かれている環境と戦略によって変わってきますから、こんなシミュレーションですべて決まるわけではありませんが、ひとつの参考意見にはなるのだろうと思います。

「とにかく価格をさげてでも市場を制圧するのだ」などということだって、一時的にはあり得ることです。ただ、それが組織の文化になって常態化してしまうことは恐ろしいことであることは知っておかなければならないと思います。

更に大切なことそれは、自ら製品を作るわけではないので商品そのものでは差別化できない卸売業だからこそ、目に見えない付加価値を上乗せすることは極めて重要だということです。
自ら製品を作るわけではないので、販売力こそが重要、多少価格を下げてでも売り切る力が大事、などという風に曲解してはいけないと私自身は思っています。

メーカーとユーザーとの間にたって、情報の集中点としてのメリットを活かして、ユーザーへ、さらにはメーカー側への提案力をつけることが重要であることは言うまでもありません。
その意味で、やはり高付加価値路線(管理会計的に言うと限界利益率アップ)を指向すべし、というのが一般論として言えるのではないかと思います。


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