大塚家具

お家騒動で話題の大塚家具、どんな財務状況なのだろうと気になりました。

ということで、ニトリと比較分析を試みました。

まずは、決算書を見る前に大塚家具についてありそうな財務面の仮説をたてることにします。

(1)高級家具を扱っているのだからきっと粗利益率は高いんだろうか
(2)近頃はニトリやikeaに押されて苦戦なのだろうか
(3)ニトリに比べて広告よりもむしろ設備にお金をかけているのだろうか
(4)立地が一等地なので家賃が高いのだろうか
(5)給料や賞与はニトリより高額だろうか
(6)商品は高級品で回転率は低いのだろうか
(7)商品在庫も設備投資負担も大きいので、もしかすると借入も多額だろうか、それとも過去の内部留保があって、借入への依存度は低いのだろうか

早速検証してみましょう。尚決算書は大塚家具は単体、ニトリは連結を使っています。
(大塚家具には連結子会社が存在しません。ニトリは持ち株会社の形態をとっており、報告主体であるニトリホールディングズの売上は不動産収入及び配当金収入のみとなっており、連結ベースでないと小売業としての評価ができない)

では、まず損益の推移から見てみましょう。
(単位:百万円、左軸:売上高、右軸:営業利益)
大塚_売上と営業利益

 

 

 

 

 

 

 

予想通りです。売上高は長期低落傾向にあります。

営業利益は一時赤字に転落したものを
店舗網の再編成(銀座本店出店と日本橋店との統合、梅田ショールームの南港への統合など)によって店舗コストと人件費を引き下げることで、
一時的には立て直したかのうように見えましたが、その後また業績は低迷しています。

粗利益率(売上総利益率)は一貫して55%前後をキープしています。業績が低迷すると値崩れによる粗利益率低下が見られることが多いですが、その現象は無いようです。

業績低迷に伴い、広告宣伝費はカットされているように見えます。このことが将来の業績にマイナスの影響を与えているかもしれません。(広告効果分析による効率化であれば問題はありません)

人件費率(ここでは給料手当・賞与のみ対象)は悪化を続けています。が、これは売上の継続的減少が原因で、構造改革努力による多少の人員削減を行っておられますが、日本の雇用慣行からして劇的な人員整理は困難です。また、一人当たり給料手当・賞与を見ても賃金カットは行われている印象はありません。
そんなことより、質の高い接客ができる従業員たちを「戦略的に」いかに活かすのかこそが重要でしょう。(最後に述べる独自性を保持しつつの戦略転換は不可欠)

(金額は人件費/人を除きすべて百万円単位)
大塚_損益指標
ニトリの最近の業績はこんな感じです。
ニトリ_損益指標

 

 

 

予想通り、好調です。毎期増収増益、その営業利益率は16%を超えています。少なくとも損益に関しては文字通り優良企業です。

残念ながらニトリについては、詳細な経費の開示がないため、大塚家具と比較することができませんでした。

では、貸借対照表を中心にストック面を見てみましょう。
(金額は百万円単位)
大塚・ニトリBS指標

 

 

 

 

 

 

 

 

まず商品在庫の状況です。
これは予想通りでした。
商品在庫日数は、ニトリが32.8日に対して大塚家具はなんと96.1日、丁度3倍の在庫量です。

この在庫負担が大きく、大塚家具の所要運転資金(売掛債権+商品在庫-買掛債務)は14,456百万円、売上高の25.7%に上っています。
小売業としては、かなり高い水準と言えます。

上の表には書いていませんが、売掛債権の回収日数も、ニトリ約11日に対して大塚家具は約21日となっており、この点も所要運転資金の増大につながっています。
高価格商品販売故のクレジット決済比率の高さが原因でしょう。

有形固定資産は予想外でした。
構成比はわずか6%、回転率は20回転という高回転です。
ニトリが土地を約800億円保有しているのに対して、大塚家具は約12億円しか保有していません。規模の違いを考慮しても非常に少ない、
つまり、自社物件主義ではないということです。このことは資本効率を高める効果があります。

さて、次は借入(有利子負債)の状況です。
両社ともきわめて良好です。
大塚家具に至っては、名実ともに無借金となっています。

純資産は両社とも70%超え、

いかに過去の稼ぎが大きかったかを物語っています。

最後にキャッシュの状況ですが、ここでは安定資金という概念を使います。
手元に自由になるお金がどれぐらいあるかということを計算しています。
現金預金から未払法人税や未払金などの超短期資金を控除して求めます。
この際、流動負債といってもほぼ安定的に存在する買掛債務や前受金は控除しません。、
安定資金は、大塚家具が6,579百万円、ニトリはマイナス2,316百万円と、大塚家具が大きく上回っています。

ただ、キャッシュなどの財務数値はストックだけで判定してはいけません。
(この点は時として専門家も間違いをおかします。例えば支払い能力を貸借対照表だけで判定しようなどということを多くの専門家が行いますが、正しくはありません)
しっかりとフローも見ておきましょう。

両社の営業キャッシュフローは、次の通りです。

大塚家具(25/12)528百万円、ニトリ(26/2)46,154百万円

規模の違いがあるとはいえ、ニトリが大きく大塚家具を凌駕していることがわかります。
つまり、ニトリは手元のキャッシュは潤沢ではありませんが、フロー、つまり毎期の稼ぎが大きいのでキャッシュ面には問題が少ないということになるのです。

尚、直近期(26/12)において、大塚家具は投資有価証券を売却することによって4,750百万円のキャッシュを得ています。
また、当該投資有価証券売却によって売却益2,150百万円が特別利益に計上されています。

つまり、業績低迷を資産処分によって損益・キャッシュフローの両面を補った形になっています。

以上を元に大塚家具の財務の評価をまとめると、

(1)業績は長期低落傾向にある
(2)店舗の再編成を行い効率化をはかっているが効果は限定的である
(3)高級家具を扱うことから在庫負担が非常に重くなっている
(4)しかし過去の蓄積がものを言い、大きな運転資金需要も含めすべて自己資金で賄えている
(5)つまり、過去の蓄えであるストック面は良好、しかし足元の業績であるフロー面に課題が大きく、解決の方向が見えていない
(6)損益の悪さを手持ちの資産処分によって補っている

こんなことから、方針についての争いが起きるということです。

大塚家具は、潤沢な手元資金、盤石な財務基盤がゆるがないうちに、方針を固めベクトルを合わせることが必要です。

ニトリと同質化するのは考えものです。

大塚家具ならではのコアコンピタンスを活かす、でもだからと言ってこれまでと全く同じ対応でもいけません。
環境が変化しているのですから。

独自性を維持しながら変化する。できないことではありません。

私には一つの仮説はあります。大塚さん、聞いてくれないかなぁ。


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